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ABS樹脂とは何か?工業用途で使われ続ける理由

ABS樹脂は、アクリロニトリル(A)、ブタジエン(B)、スチレン(S)の3成分から構成される熱可塑性樹脂です。
工業用途で広く使用されている理由は、強度・耐衝撃性・加工性・コストのバランスが非常に優れている点にあります。

金属代替や汎用樹脂の代表格として、家電筐体、自動車内装部品、機械カバー、治具、試作部品まで幅広く採用されています。
特に「樹脂で剛性を確保したい」「コストを抑えつつ安定供給したい」といった設計条件において、ABS樹脂は最初に検討される材料の一つです。

ABS樹脂の主な特徴一覧

耐衝撃性に優れる

ABS樹脂最大の特徴は高い耐衝撃性です。
ゴム成分であるブタジエンが含まれることで、割れにくく、落下や衝撃に強い特性を持ちます。
そのため、外装部品や人が触れる部品に多用されます。

成形加工性が高い

射出成形・切削加工・接着・塗装など、多様な加工方法に対応できる点もABS樹脂の大きな強みです。
寸法安定性が比較的高く、加工後の反りや歪みが出にくいため、量産部品から試作まで幅広く対応できます。

コストパフォーマンスが良い

ABS樹脂はエンジニアリングプラスチックほど高価ではなく、汎用樹脂よりも性能が高いため、
「性能と価格の中間層」を担う材料として位置づけられます。
コスト制約が厳しい工業製品において、非常に現実的な選択肢です。

外観品質が良い

表面平滑性が高く、塗装・メッキ・シボ加工との相性が良いため、意匠部品にも適しています。
家電製品や操作パネル、カバー類で多用される理由の一つです。

ABS樹脂の物性データ(代表値)

項目 代表値 設計時の意味
引張強度 40〜50 MPa 汎用樹脂として十分な強度
曲げ弾性率 2,000〜2,500 MPa 適度な剛性としなり
耐熱温度 80〜100℃ 高温用途には注意
比重 約1.04 軽量化に有利

工業用途でのABS樹脂の主な使用例

産業機械・装置カバー

機械装置の外装カバーや安全カバーでは、軽量性・耐衝撃性・加工性が求められます。
ABS樹脂はこれらの条件を満たしつつ、量産性にも優れるため広く採用されています。

家電・電子機器筐体

テレビ、プリンター、制御盤などの筐体では、外観品質と耐衝撃性が重視されます。
ABS樹脂は表面処理の自由度が高く、意匠設計との相性が良いため定番素材となっています。

ABS樹脂の弱点と注意点

耐熱性は高くない

ABS樹脂は高温環境には不向きです。
80℃を超える環境では、変形や物性低下のリスクがあります。
高温条件が想定される場合は、PC樹脂やPBTなど他材料との比較検討が必要です。

耐候性・耐薬品性に注意

屋外使用や紫外線環境では劣化しやすく、また有機溶剤への耐性も限定的です。
屋外用途を検討する場合は、材料変更や表面処理の検討が不可欠です。

ABS樹脂と他樹脂との違い

ABS樹脂とPC樹脂の違い

PC樹脂は耐熱性・耐衝撃性に優れますが、コストが高く加工難易度も上がります。
一方ABS樹脂は、コストと性能のバランスを重視する用途に向いています。

ABS樹脂とPP樹脂の違い

PP樹脂は軽量で安価ですが、剛性や外観品質ではABS樹脂が優位です。
「見た目」「強度」「加工精度」が求められる場合はABS樹脂が選ばれます。

ABS樹脂選定で失敗しないためのチェックポイント

  • 使用温度は80℃以下か
  • 屋外・紫外線環境ではないか
  • 衝撃・外力が加わる部位か
  • 外観品質が重要か
  • 量産か試作か

これらの条件を整理することで、ABS樹脂が最適かどうかを判断しやすくなります。

よくある質問

ABS樹脂はどのような工業用途に向いていますか?
ABS樹脂は、耐衝撃性と加工性、コストのバランスに優れているため、産業機械のカバー、家電や電子機器の筐体、治具や試作部品などに向いています。特に、外観品質が求められる部品や、量産と試作の両方に対応したい用途で選ばれやすい材料です。
ABS樹脂は高温環境でも使用できますか?
ABS樹脂は耐熱性が高い材料ではなく、使用温度の目安は80〜100℃程度です。それ以上の高温環境では、変形や物性低下が起こる可能性があります。高温条件が想定される場合は、PC樹脂やPBTなど、耐熱性に優れた材料との比較検討が必要です。
ABS樹脂は屋外や紫外線の当たる環境でも使えますか?
ABS樹脂は耐候性が高い材料ではないため、屋外や紫外線が長時間当たる環境では劣化しやすい傾向があります。屋外用途で使用する場合は、表面処理を施すか、耐候性に優れた別の樹脂材料を検討することが一般的です。
ABS樹脂とPC樹脂はどのように使い分ければよいですか?
コストと加工性を重視し、一般的な工業用途で使用する場合はABS樹脂が適しています。一方、耐熱性やより高い耐衝撃性が求められる場合はPC樹脂が選ばれます。使用温度や要求性能を整理したうえで使い分けることが重要です。

まとめ:ABS樹脂は「万能」ではないが「最適解」になりやすい材料

ABS樹脂は、すべての条件を満たす万能材料ではありません。
しかし、耐衝撃性・加工性・外観品質・コストのバランスに優れ、
多くの工業用途において「最適解」になりやすい樹脂です。

用途条件を正しく整理し、他材料と比較した上で選定することで、
ABS樹脂のメリットを最大限に活かすことができます。